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2008.02.12

子どもにいちばん教えたいこと

レイフ・エスキス 子どもにいちばん教えたいこと:将来を大きく変える理想の教育 草思社2007(Teach Like Your Hair's on Fire by Rafe Esquith )

「教職は報われない仕事である。教育の意義を信じたいが、その理由をみつけるのは至難の技だ。」(技はママ)ロサンゼルスのけっしてめぐまれているわけではない移民家庭の子どもが通う小学校の56番教室で、奇跡のような教育を実現している著者のエピローグはこの言葉から始まっていた。

この本を読んだとき、これはほんとうなのだろうか、と思ったほどだ。学力をあげるばかりでなく、毎年小学生が演ずるシェークスピア劇の活動は教師としてはじめて米国芸術大賞を受けるほどの教育が、いったいどのようにして実現されたのであろうか。本書の中にもシェイクスピアの含蓄ある言葉が節々に引用されている。また、「古典」にはすぐれて現代的な意味のあることも子どもたちに魅力的に教えられている。

生徒達の生きる糧として、読書し、勉強する習慣、音楽活動、スポーツ、地域へのすばらしい奉仕活動の実践が3章から10章で展開されている。これらは「安心して学べる場所」「教室を第二のわが家に」という著者の教育への基本的な姿勢の上に、豊かな教育として結実しているように思われる。

第2章ではローレンス・コールバーグの道徳発達の理論が採られ、教育の思想的根幹をなしている。

3章から10章は基本的な国語や算数、理科、経済など各論を「子ども最大限に伸ばす方法」論が展開されている。基本的な勉強というものを生活の中に根付いた知識、それこそ「生きる力」として身につけさせようとしていることがわかる。

11章ではさらにさまざまな問題解決のスキルが教えられている。試験問題を解く、ということも問題解決の1つだが、一部分にすぎないものとして、日常生活の上で起こる問題の発見とその解決法として実践されているところが素晴らしい。

12章から14章は映画、旅行、ロックバンドなど生活を、人生を真に豊かにする「情操教育」が展開されている。15章はコミュニティへの奉仕活動、ほんとうに感動的な、が語られている。翻訳では最後の16章が課外活動として続けられているシェイクスピア劇を作り上げていく過程が著者の教育思想・実践の総まとめとして述べられている。

人の尊厳とはなんだろうか。この生徒達は尊敬される存在に成長していくのだが、それはただ勉強ができることによるのでなく、このような人間的な行為のために尊敬を受けているのだ、ということを伝えようとしている。かれらは、われわれもおちいりがちな「勉強さえできれば」という思考のはるか彼方を目指しているようである。

このような奇跡のような教育を実現している著者でさえ、教育という仕事にうちのめされることがあるのだという。それが最初に引用した文章だ。そんなときにはある卒業生が書いたエッセイを読むのだという。それは、著者が目指した教育の神髄にふれた内容のものだ。この言葉のあとには56番教室の卒業生のエッセイが続く。
「不安や恐怖が幸せと笑いに取って代わった。教室は第二のわが家になり、クラスメートが第二の家族になった。あの教室で、わたしは人間として成長し、いまある私になったのだ。」
そして、レイフ・エスキスは「彼女はわたしの最高の教師なのだ」と書いている。ここに著者が考え実践してきた教育の本質があるように思う。

目次
プロローグ 教室での火事
Ⅰ教室を第二のわが家に
 1安心して学べる場所をつくる
 2レベル6の倫理をめざす
Ⅱ子どもを最大限に伸ばす方法
 3読書を自分のものにする
 4文章力をつける
 5算数を楽しむ
 6テストを攻略する
 7世界を知る
 8自分の手で実験する
 9スポーツから学ぶ
 10お金の使い方を学ぶ
Ⅲもっと上をめざそう!
 11問題を解くスキルを身につける
 12映画を成長の糧とする
 13街に出る
 14ロックバンドをつくる
 15コミュニティに奉仕する
 16シェークスピア劇をつくりあげる
エピローグ 安らぎの場としての教室

(翻訳者の菅靖彦氏によると翻訳版では一部割愛されている部分がある)

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