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2007.04.23

役に立つ高校数学

広田照幸・川西琢也(編)こんなに役立つ数学入門:高校数学で解く社会問題 ちくま新書653、2007

高校での勉強は受験のための道具のようになっているという。学習の面白さを楽しむことのできる一部の(?)高校生を除けば、たとえ「優等生」であってもな んのために学ぶのかがよくわからない「無意味感」に苦しめられているようだ。本書の編者である広田氏は高名な教育学者であるが、高校時代の勉強をふりかえってそ のように述べられている。本書は数学が苦手だったが、後に研究の必要にせまられてふたたび数学に出会うことになる体験が、さまざまな分野の研究者によって 語られている。それらを通じて、高校で学ぶ数学がとても社会の役にたっていることを例証しようとしている。高校でいろいろな教科を勉強するときに、このよ うな役にたつ例が示されれば、「無意味感」にさいなまれることは軽減されるのではないか、と主張されている。
 話題は広く社会的な問題にわたる。これらはいわゆる「文系」「理系」の枠組みではくくることができない分野である。文系・理系の分類は主に数学ができる かできないかで行われている。このことは決して間違いとは言えないが、現実には文系と呼ばれている学問にも数学的要素が強い分野も多い。

はじめに「高校数学が社会問題を解く」(広田照幸)
第一章「学歴社会の収入格差を考える」(佐藤香)
第二章「選挙における得票と議席」(田辺国昭)
第三章「格差社会を生むもの」(上島康弘)
第四章「松枯れと闘う高校数学」(鎌田直人)
第五章「高校数学でわかる地震」(平松良浩)
第六章「環境問題を解く高校数学」(川西琢也)
あとがき

各分野の基本的な問題を高校数学の範囲で説明し、基本的な理解は十分可能であることを示している。
 新しい学問の魅力を感じるようになるのはやはり「先生の力量」(上島康弘氏)に負うところが大きい。特に苦手な分野では。
 また、数学の勉強法としておもしろいのは、教科書の例題のみを何度もくりかえし解く方法が古典的で一番良い(川西琢也氏)、とのことだ。

 ただ、著者諸氏は数学が苦手であったこと、人によっては落ちこぼれであったことを告白されてもいるが(もちろん謙遜であろう)、いまは数学を使っていろいろな研究を進めている、というような内容から、どうしてもちょっと自慢話みたいに聞こえてしまうところもある。
 また、執筆者は大学に所属する研究者の方々なので、本書の意図に反して、研究には役立つかもしれないが、自分は研究とは無縁である、というような印象をもたれるかもしれない。編者の川西氏は後書きのなかで、企業や社会の中で、高校・大学での数学を日々の仕事のなかで使っている方々の話を聞いてみたいと述べられているが、このような続編が計画されているのかもしれない。

 高校での勉強や進路を考える上で、「数学」に限らず、このような副読本が各教科に用いられるとよいと思ったことと、実は心理学にもそうとう数学的な領域があるが、残念ながら本書では取り上げられていない。高校教科の内容で学ぶ「心理学副読本」があってもよいのかもしれないと思う。

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