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2007.01.06

Sociometrics

社会の見方、測り方:計量社会学への招待
数理社会学会(監修)与謝野有紀、栗田宣義、高田洋、間淵領吾、安田雪(編集)
勁草書房、2006

 本書は計量社会学で用いられている研究手法、主として統計的方法、を計量社会学研究の例を通じて紹介・解説されたものである。手法としては人文・社会学系でよく用いられている記述統計学、推測統計学、多変量解析法が取り上げられている。本書の特色は典型的な計量社会学の研究事例とあわせて統計技法が解説されている点にある。
 取り上げられている社会現象は、家族、犯罪、役割行動、選挙、宗教、自殺、教育、社会階層、人間関係、性格検査(F尺度)など多岐にわたる。
 「本書の使い道」として、(1)社会学関連領域を学ぶための「計量分析入門書」として、
(2)計量分析の手法を「社会学的研究に応用する際の実例集として」、(3)「分析手法を選択するためのハンドブックとして」、が想定されている。
 「本書の使い方」にはこれらの三つの用途として使いやすいように「分析目的」、「分析手法」、「社会学の(研究)テーマ」それぞれから該当部分をさがしやすいように工夫された「目次」と索引が用意されている。

 取り上げられている研究事例には計量心理学の分野とも関わりの深いものも多くあり、特に社会心理学的な研究といってもよいものも取り上げられている。たとえば、 犯罪と社会的諸条件の関係、投票行動、地位達成、人間関係の分析、親子の価値観の研究、権威主義(F尺度)などである。

 3-7「権威主義的攻撃とF尺度」(複数の連続尺度間の類似性を検討し要約する:因子分析、石黒格著 p.279-295)ではAdornoらが唱えた「迷信にとらわれ、同時に権威に迎合するある種の心理傾向」を「権威主義的パーソナリティ」と名づけ(質問項目間の相関関係に注目して)9つの下位尺度の得点を「権威主義的パーソナリティ」の測定値とした。これは基本的には因子分析の考え方と同じである。このような「(古典的な)概念」を計量分析の現代的な手法で実証的に検討できることを示した事例が解説されている。
 しかし、この研究が社会学的な研究である所以はどこにあるのだろうか。また、この例は心理学の研究でもあるが、同じくそれが心理学的な研究とされる理由は何なのだろうか。心理学ではこのような概念は記述的な意味でのパーソナリティとして理解されている。社会学的な研究ではF尺度得点と各種の社会学的条件の関係が追求されることになるのであろうか。
 他方、たしかに統計的なデータをきちんと調べることで明らかになることは多い。特に、価値観や偏見による影響を受けやすい対象についてはこのような実証的な手法をとることは重要であると思われる。
 本書はこのような社会学的な研究対象を事例として各種の分析手法(質的・量的)が体系的に解説されているという点で特色があり、また、類似の心理学的テーマを考える際に参考になる点も多かった。本書の英語タイトルはAn Introduction to Sociometricsとなっている。心理学の分野でもよく知られているようにモレイによる人間関係の測定法としてのソシオメトリーという用語が先行している。本書では英語ではまだ一般的ではないかもしれないがあえてSociometricsという用語を選択したということである。
 計量心理学の分野にもこのような入門書があるとよいなあと思いながら読み進めている。

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