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2007.01.08

携帯電話

 昨年末に知己の東福寺一郎氏(三重短期大学)から「大学生の携帯電話利用にかかわる行為と倫理観」(三重短期大学法経学会「三重法経」第128号(2006)p.15-21を送っていただいた。
 東福寺氏の論文では大学での携帯電話の利用状況、その状況での携帯電話をつかうことの適否(正当性の認識)について質問紙調査の結果がまとめられていた。調査対象者はある授業の受講者(大学1、2年生)およそ100名(男子がおよそ75%)であった。
 携帯電話の普及とともにさまざまな行動変化がみられるようになったが、その中で東福寺氏は日常生活におけるさまざまな状況、特に、携帯電話の使用の是非が問題になりそうな歩行中、電車等の優先席付近での使用、自転車に乗りながら、病院、図書館、講義中の行動に注目している。調査項目は各状況でどの程度携帯や携帯メールを使ったことがあるかという質問およびそれらの場面で携帯や携帯メールをつかうことの善悪の判断(「倫理観」)が問われている。それぞれ5件法の回答形式で行われている。

 また、一日にどのくらい携帯電話をつかうか、という質問によりおおむね「10回から15回程度」以上を「高頻度」群(61名)、「数回程度」および「あまり使用しない」を「低頻度群(41名)、にわけて集計分析されている。

 調査の結果によると、通話の頻度も高いがメールやインターネット利用が多いことがうかがわれる。
 以下、大学に関係した項目が興味深いのでこれらを中心にまとめておこう。
講義中に通話したことがあると応えた学生はさすがに少なく(2%:低頻度群、0%:高頻度群、以下同様)であったが、メール・インターネット利用となるとそれぞれ(40%、60%)となる。また、図書館で通話したことがあるか、については講義中と同じで(2%、0%)と低いがメール・インターネットは(42%、77%)にのぼる。
 一方これらの行為の善悪判断については講義中の通話(95%、98%)、メール・インターネット(54%、53%)、図書館での通話(95%、97%)、同じくメール・インターネット(29%、35%)となっていて、通話についてはあきらかに不適切と考えているが、メール等については判断が分かれていた。
 私自身の経験でも携帯電話の普及期にはよく講義中に呼び出し音が鳴るという経験をしたものだが、最近では「マナーモード」の普及でこれらはむしろ恥ずかしい行為となっているのではないだろうか。しかし、携帯のメールについては新田文輝氏(「静かなる私語」:携帯電話と大学生の行動変化、吉備国際大学社会学部研究紀要、2002、第12号、75-85)による、講義中のメール交換について72%が「ある」としている研究が引用されている。しかも1つの講義中に「2ー4件」のメール交換をする、が6割を超え、その内容は特に急ぎの要件というわけではなく「世間話」や予定の連絡、友人のうわさ話などであるようだ。
 講義中のこのような携帯利用の善悪については、東福寺氏の結果でもメールについては意見が分かれていたが、新田(2002)によると他人に迷惑をかけていないので良い、とする考え方が多いようである。すなわち、「損をするのはメールする学生」(50%)、「誰にも迷惑をかけないからいい」(27.5%)とする意見が多いようだ。ほんとうに、誰にも迷惑をかけていないかどうかはよく考えてみなければならないと思われるが、大学により程度の差こそあれ、実態としてはこのような傾向にあると思われる。これにどのように対応するかは(古典的な「内職」への対応と同様に)なかなか難しい問題である。

 他の状況については、特に病院、優先席近くでの携帯使用等についてはおおむね社会的な常識にそった判断がなされ、実際にも使用を控える傾向が見られる。東福寺氏は特に自転車に乗りながらの携帯使用、メール使用について注意を喚起しておられる。それらを不適切であると判断している一方で、比較的高い割合(30%~56%)で通話やメール等を利用したことがあると応えている。自動車の運転時には「違法」であるが自転車(軽車両)の場合には特に罰則規定が設けられていないが、たしかに危険性はかなり高いものと思われる。

 なお、調査法については個人のプライバシーにも関わることもあり実際には困難かもしれないが、調査対象者の同意を得た上で専用の携帯電話を用意して通信ログを分析する、という方法も考えられる。また、データの分析についてはごく基本的な集計が行われているが、特に「行為と倫理観の相関」については、全体的な相関のみでなく、どのような携帯についての倫理観をもつ個人がどのように利用していたか、について傾向がわかるような分析方法をとるとどのようになるのだろうか、と思った。また、もしも「他人に迷惑をかけない」ことが一定の行動規範になっているとすれば、他人の「迷惑」を具体的にさし示すことで「不適切な場面」での利用を抑制する方法を考えるヒントになるのかもしれない。

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