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2005.09.06

S化粧品研究所

 見学合宿二日目は五反田にあるS化粧品会社のビューティ・サイエンス研究所を訪問した。こちらの見学もいつも夏の暑い時期におじゃまして、研究員の平尾さんには毎年のようにお世話になっている。この業界の企業研究所としては国内でも最大級と思われるが、それでも心理学系研究員は5~6名ほど、ということであった。
 研究業務内容をお聞きしていると心理学の知識を生かすことができる領域が多い。たとえば、官能評価、商品モニター調査、顔や表情認知の研究、化粧と「心と体」の問題、健康の問題、生活者(消費者)研究、「お客様センター」での対応や調査等等である。これらの領域はまさに基礎心理学の応用分野であることは一般の人ばかりでなく、最近では「心理学」を専攻する学生諸君にもあまり知られていないようだ。
 毎年、説明をしてくださる平尾さんは心理学の出身であるので、このあたりの事情はよくわかっておられて、最後にまとめとして心理学とその応用研究について関連して話してくださる。基礎的な研究の意義として、たとえば、ベースメイクアップを例にしたお話では、経験的には基礎化粧品の効果はあきらかなのだが、基礎化粧をした場合とそうでない条件で具体的に何が違うのかを明らかにするのはなかなか困難なことだ。このような場合、アイカメラを用いて顔の知覚・認知実験を行うと、基礎化粧を施した条件では主要な目鼻立ちの部分に視線が集中し、「欠点」と思われる部分に視線が誘導されないことが明らかとなった。このようなデータは心理学分野の固有の技法によって得られたものである。このようなデータは「異分野」間の共通のデータとなる。
 多くの領域の協力体制を築いて製品開発にあたらなければならない研究所では他の領域の研究者からは得られない発想に存在意義がある。つまり、心理学の固有の発想によるデータによって、総合的な製品開発の過程に独自の貢献をすることができる、ということを述べられている。
 さらに、この研究所のふところが深いと感じたのは、商品開発の技術的問題のみでなく、化粧や人間についての文化的な側面を含めた本質的な考察まで行い、化粧と人間との根本的な関係から商品開発を見直していこうとしていることである。これらの活動は直接モノを生み出す過程としては見ることはできないが、企業や製品に方向性を与える非常に重要な部分であろうと思う。
 学生諸君やわれわれの行う「企業研究」にはこのあたりの問題意識が不足していることに気がついた。
 所内見学やレクチャーで予定時間もあっというまに終わり、少し時間オーバーしたところで、記念写真をとり、研究所をあとにした。

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