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2004.04.17

フェスティンガー

宇沢弘文(著)経済学と人間の心(東洋経済新社、2003)の中に、「レオン・フェスティンガーを偲ぶ」というエッセイがあった。フェスティンガーはもちろん認知的不協和理論を提唱した著名な社会心理学者である。ずいぶん前のことになるが、まだ大学院生だったころに、フェスティンガーが専門領域を変えたらしい、という話を聞いたことがあった。そのときは理由もよくわからなかったのであるが、このエッセイにはその事情がかなりくわしく書いてあった。

フェスティンガーは当時スタンフォード大学のスター教授であり、米軍の顧問のような地位にもあって、ベトナム戦争にも関わりがあって、フェスティンガーは彼の理論が戦争に応用された(どのようにか、は書いてなかったが)ことに苦悩し、痛ましいほどであったという。

大学も学生運動のさなかにあった時期でもあった。フェスティンガーはある日突然に家族や大学の地位も捨てて文字通り姿を消したという。ちょうどそのころフェスティンガーは阿部公房に傾倒し、宇沢氏もその傾倒の危険性を感じるほどのものだったらしい。その後ベトナム戦争も終わり、だいぶあとになって宇沢氏に手紙がきた。それによると、米国における大学改革の一つの思想が結実したNew School for Social Researchに学生として入学し、文化人類学を学び、再婚もして、その大学で教えているという内容であった。

この本のなかにはほかにもベトナム戦争が関わった大学や研究者の悲劇が多く記されている。宇沢氏はベトナム戦争を米国の衰退の始まりと見ておられる。今度のイラク戦争もそれを例証する証拠の一つになりつつある。

「こころ」をこわだかに語るものには気をつけよ、というのは現在必要な教訓の一つだが、この本で語られている心はその対局にあるものだと思う。

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